働き方改革実行計画で発表されたものの中で、会社を震撼させているもののひとつが、「罰則付き時間外労働上限規制」です。

罰則付き時間外労働上限規制の概要

労働時間の原則は、1日8時間、週40時間です。原則、これを超えて労働させてはいけません。

それを超えて労働させるには、時間外労働・休日労働に関する協定(通称「三六協定」)を労使で締結します。この三六協定に、上限を定めてこれを超えたら罰則がつくということになる、ということです。ちょっと長いですけど、まずは内容を抑えておきましょう。

<原則>

・週の法定の時間外労働を、原則として、月45時間、かつ、年360時間とし、違反した場合には罰則が課されます。(この「月45時間、年360時間」という時間自体は、これまで「限度時間」として示されていた時間外労働の時間数と同じです。罰則の内容はまだ決まっていません。)

<特例>

・特例として、臨時的な特別の事情がある場合として労使合意した場合に「特別条項」というものを設定することができますが、その上限が年720時間(=月平均60時間)とされました。

これまで、この特別条項には上限がありませんでした。それで、「三六協定は、結局青天井に残業させられるではないか!」との批判があったわけです。実際、上限1000時間の特別条項を見たことがあります。こんな時間でも監督署は受け付けてくれてたんですね。あ、特例にはまだ続きがあります。

・この年720時間以内において、下記の上限を設ける。

2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均は、いずれにおいても、休日労働を含んで80時間以内を満たさななければならない。

単月では、休日労働を含んで100時間未満を満たさなければならない。

③加えて、特例の適用は、年半分を上回らないよう、年6回を上限とする。

 

100時間ばかりが注目されて、「なーんだ、毎月の時間外労働を100時間までに抑えればいいんでしょ」と思っている経営者もいるようですが・・、上記の通り、違います!

大企業が規制を守るのは、もしかしたら比較的簡単かもしれません。時間が超えてしまいそうな部分を下請けや外注に回すということができるからです。下請けや外注として受ける中小企業は、ただでさえ人手不足の中、これまで以上に長時間労働を強いられる状況に陥る可能性があります。それも加味したうえでの、経営者側と労働者者側のせめぎあいのぎりぎりのところで合意した数字と言えます。

施行は、平成31年4月と言われています。それまでに、長時間労働を少しでも減らす、効率的な働き方を、個人レベルの努力というのではなく、経営戦略として、中小企業こそ真剣に取り組む必要があります。

次回は、さらに特例となる業界のことを書きます。

 

社会保険労務士法人ティムス 代表社員 玉坪郁子

 

 

 

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加