昨年の8月のある日、母は転倒して大腿骨を骨折し、50日の入院を経て老健施設(介護老人保健施設)に現在もいます。

週2回のリハビリも続けてはいますが、認知症が進んでしまった現在、「自分で立って、自分で歩くんだ!」というような意思のないリハビリでは回復は望むべくもなく、車いす生活となっています。要介護も4のままです。

それなりにこの施設での生活にも慣れ、穏やかに過ごしている母を、できればこのままこの老健施設で面倒見てもらいたい・・・のですが、老健施設は、そんな施設ではありません。

家で面倒を見るか、俗にいう老人ホームに入居するか、とうとう決断しなくてはならないようです。

 

老人ホームを見に行く~「特別養護老人ホーム」

老人ホームといえば、一番有名なのは「特別養護老人ホーム」です。

特別養護老人ホーム(「特養」)は、全国に約9500か所あり、約57万人が暮らしています。毎月の費用は介護サービス費と生活費を合わせて月5万円~10万円ほど。「入居一時金」はありません。これなら年金受給者も無理なく入居できます。人気が高く、厚生労働省によると2016年4月時点での待機者は36万人以上とのこと。

ただし、最近は、地域によりますが空きのある特養が結構あるようです。

要因のひとつは、2015年4月に施行された介護保険法改正。それまで要介護1以上であれば入居できたのが、原則要介護3以上となり、要介護1、2の人が除外されてしまいました。

そしてもうひとつの要因は、2001年以降に新設された施設に「ユニット型」が多いこと。従来型は4人同室の多床室が主でしたが、それでは入所者のプライバシーが保てないということから、厚生労働省は特養の個室化を推進しているそうです。なので、2001年以降に新設された特養には個室が設けられています。ユニット型とは、その個室の入所者10人程度をひとつの生活単位=ユニットとして職員を配置し、ケアする形態です。

ユニット型特養は、福祉先進国のスウェーデンのケアスタイルを取り入れたもの。すごく良さそうに聞こえますね。ただし、多床室に比べ4~5万円程度料金が高くなってしまいます。年金で賄うにはこの料金差が埋まらないと入居できません。また、ユニット型は個別ケアであるため、職員の負担が大きくなりがちで働き手がなかなか集まらないという施設側の事情もあるようです。

実は、うちのマンションから歩いて5分のところに特別養護老人ホームがあります。というか、うちの区では特別養護老人ホームはこの施設が1個あるだけです。

以前に見に行ったことがありましたが、他の施設を見たことがない(免疫がない?)状態で見学した際に、イメージが暗くてそそくさと帰った覚えがあります。「あのときは天気も悪かったし、これでも何個かの施設は見て覚悟はできたし、もう1回だけ見に行こう」ということで、姉と再度見学に行きました。古い施設で、もちろん多床室(4床~6床)です。再度見に行った結果は、「ごめんなさい、やっぱりあんなに穏やかに過ごしている母をこの施設には入所させたくない」でした。施設の担当の方は、「この施設に入られると、認知症は進みます。」とはっきり仰いました。そうなんです。特養は、認知症を軽減したりリハビリをしたりするところではなく、人がそこで「過ごす」ためにお手伝いしてくれる施設なんです。認知症が進まないようにするには、もっと前段階で老人福祉施設を活用して、あの手この手で手を打っておく必要があったんだ・・・と、あらためて確認させられたのでした。

 

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